弱視
生後、片目もしくは両目に適切な視覚の刺激が伝わらず、視力の発達が止まったり遅れたりすることで弱視になる可能性があります。
片方のまぶたが下がっていたり、黒目の中心部分が濁っていたり、強い遠視などの屈折異常が原因になることがあります。
原因がわかればその治療をすることが重要ですが、基本的には眼鏡による屈折矯正、遮へい訓練(アイパッチで見える目を遮へいし、見えていない方の目を使う訓練)を行うことで改善する場合も多く見られます。
弱視の種類と原因
子供の弱視は大きく分け【機能弱視】と【器質弱視】の2つに分類されます。
その中でも機能弱視は「屈折異常弱視」「不同視弱視」「斜視弱視」「形態覚遮断弱視」の4種類に分けることができます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
※子供の弱視のほとんどは機能弱視であることが多いです。
■機能弱視
目そのものは健康だが、遠視、乱視や斜視などの原因で視力発達が遅れている状態。
・屈折異常弱視
屈折異常弱視は、遠視・近視・乱視が両眼とも強く、視力障害を起こしてしまうことです。
程度によっては近視、乱視でも起こりますが、一番多いのは遠視によるもので、眼鏡をかけないとくっきり見えません。生まれつきくっきり見えない状態が続くと視力の成長が劣ってしまい弱視になります。
・不同視弱視
不同視弱視は、遠視・近視・乱視で眼に左右差があることで起こる弱視です。
正常な眼はちゃんと発達しているのに対して、屈折異常の強い眼は正常に発達せず弱視になります。また、不同視弱視をほっておくと屈折異常の強い眼だけが斜視を併発する可能性もあります。
・斜視弱視
斜視弱視は、斜視が原因で起こる弱視です。
斜視は正面を見たときに片方の目はしっかり前を向いているのに対して、もう片方の目は左右どちらかに向いている状態を言います。視線のズレている眼は脳に情報を伝達しないため、常に同じ目がズレている場合、視力が発達せず弱視になります。
・形態覚遮断弱視
視力の発達時期に視覚の情報が遮断されることによって起こる弱視です。
原因としては先天白内障や眼瞼下垂などがあげらせます。
■器質弱視
未熟児網膜症や先天白内障など、目の中に病気があり、正常に像を捉えられなかったり、脳に正常な像を伝えることができない状態で、治療や訓練でも視力発達が困難。
弱視の治療法
治療方法は種類によっても異なります。それぞれ見ていきましょう。
・屈折異常弱視の治療法
眼にあった眼鏡を装用することで視力の発達を促します。発達に左右差がでてくれば追加の治療を行います。早期治療することで早く視力が成長しますが、眼鏡を外すと見えにくいので視力が改善してもほとんど眼鏡を外せるようにはなりません。
・不同視弱視の治療法
屈折異常を矯正するために眼鏡を装用します。始めは眼鏡を装用して様子をみますが、視力の改善が思わしくない場合は、健眼遮閉(視力のいいほうの目を見えにくくし、視力の悪いほうの目を使わせようとする)を行うことで悪い方の目の改善を図っていきます。その他にも、アトロピンという薬剤を点眼する治療もあります。
視力の左右差がなくなれば健眼遮閉は終了となります。早期治療をすることで、早く視力が成長しますが、眼鏡を外すと片目は見えにくいので視力が改善してもほとんど眼鏡を外せるようにはなりません。
・斜視弱視の治療法
固視矯正のために健眼遮閉を行います。固視(鮮明な視覚を得るために視覚空間内の目標に視線を固定すること)が正常になれば、視力を上げるため、さらに健眼遮閉やアトロピンの点眼、手術を行うこともあります。
・形態覚遮断弱視の治療法
原因の疾患をできる限り取り除く治療を行います。先天白内障では程度に応じて、水晶体摘出手術を行います。また、経過観察の中では屈折矯正や健眼遮閉などの治療を行っていきます。
弱視の見え方
弱視の見え方は人によって異なりますが、概して視力が低下しているため、物がぼやけたり、ぼんやりとしか見えない、または歪んで見えたり、文字が読みにい、遠くの物が見えにくい、片方の目が弱視の場合は、深さや距離感がつかみにくくなることもあります。弱視の程度や症状には個人差があるため、専門医師の検査を受けることが大切です。
弱視かも!子供のサイン
弱視の治療には早期発見、早期治療が大切です。ただし、お子様の見え方は親御さんが確認できるものではなく、眼の異常に気付いてあげることは難しいと言えるでしょう。もしもお子様が物を見るときに眼を細めていたり、画面を見るとき顔が近い、横目で見ているなどあれば弱視の可能性があります。また、左右どちらかの眼を隠したときに嫌がったりする場合は片目だけ弱視の可能性もがあります。
斜視
物を見ようとするときに、片目は正面を向いていても、もう片方が違う方向を向いてしまっている状態です。 常に斜視がある場合【恒常性斜視(こうじょうせいしゃし)】と、時々斜視になる場合【間欠性斜視(かんけつせいしゃし)】があります。 斜視の原因は、目を動かす神経や筋肉の異常や、遠視、目や頭の病気などがあり、原因を調べるために全身の検査が必要になることがあります。 遠視が原因の斜視であれば、きちんと合わせた眼鏡を使えば改善する場合が多いですが、場合によっては手術が必要になることがあります。 常時ではなくときどき視線がずれる場合は、しばらく経過観察をし、ずれの頻度が上がるようであれば必要に応じて手術を行うこともあります。
斜視の原因
斜視には先天的なものと後天的なものがありますが、先天的な原因は眼を動かすための脳の神経系や眼球の動きを制御する筋肉の異常によるもの、重度の遠視によるものがほとんどです。 後天的な斜視の原因には、眼の神経の麻痺や甲状腺眼症、重症筋無力症、糖尿病などの全身の病気に伴うもの、外傷によるものなど様々、視力不足が原因になることもあります。
また、斜視になると、ズレている眼の視力が発達せず、そのまま弱視になる可能性があります。逆に片方の眼だけ視力が悪いと、その眼が使われず、斜視になる事もあります。
斜視の種類
斜視には種類があります。冒頭で述べた通り「恒常性斜視」と「間欠性斜視」がある他にズレている目の方向によっても呼び方が異なります。
※一見斜視のように見える偽内斜視(ぎないしゃし)は、鼻根部の低い乳幼児に多く見られますが、成長とともに治ります。
■外斜視
片目が外側を向いている状態です。
常に外側を向いてしまうタイプと時々外側を向いていますタイプがあります。
■内斜視
片目が内側を向いている状態です。
常に内側を向いてしまうタイプと時々内側を向いていますタイプがあります。
外斜視よりも常に斜視になっている方が多い傾向にあります。
また、内斜視は下記種類に別れます。
・乳児内斜視
生まれて早期に見られ、常に目が内側を向いている斜視です。
両眼とも内側に向く場合もあります。常に斜視になっている目は視力が育たず弱視になる可能性があります。生まてすぐは視力や立体視の成長にとても重要な時期で、立体視の獲得のため、生後8ヶ月以内に斜視手術が推奨される場合があります。
・調整性内斜視
遠視が原因で出てしまう斜視です。
遠視を補おうと目のピント調整を行うことで目の位置に影響が出てしまい斜視になります。こちらも遠視が原因で視力が育たず弱視になる可能性があります。
※その他にも後天性内斜視の一つに、電子端末の過剰使用が原因で内斜視になっているのではと言われています。長時間近くで画面を見続けることで目が内側にずれてしまう可能性があります。
■上下斜視
片目が上を向いていたり、下を向いていたりする状態です。
上斜視または、下斜視と言います。
眼球を動かす筋肉(上下直筋、斜筋)の麻痺、形態異常、機械的制限と言った様々な原因によって引き起こされます。最も代表的な原因は生まれつき上斜筋が弱い(先天性上斜筋麻痺)ことで起こる斜視があり、両眼で見ようとして顔を傾けて見る特徴があります。
■回旋斜視
回旋斜視には外回旋斜視と内回旋斜視があります。
外方へ回旋していれば外方回旋斜視と言われ、内方に回旋していれば内方回旋斜視と言われます。
斜視の治療法
斜視の治療方法は大きく分けて2つ「手術による方法」と「それ以外の方法」です。
どちらの方法で治療をするかは斜視のタイプや性質、年齢などによって異なります。
しっかり検査を行った上でどの方法が適切かを判断します。
手術の場合は主に生後6ヶ月以内に大きく目の位置がズレている場合は2歳までに手術が必要です。生後6ヶ月以降で、位置ズレが少ない場合はそれ以外の方法として斜視用の眼鏡を使用したり、斜視訓練などで治療していきます。
子供の両眼の発達にはタイムリミットがあり、早期診断と治療が必要です。お子様の斜視が疑われた場合には必ず眼科に相談しましょう。
斜視の見え方
急に斜視になると左右の目で異なった対象物を見るため、混乱視と言われ、異なる像が重なって見えたり、腹視と言われる物が二重に見えたりします。
しかし、幼少時から斜視である場合は、頭がその見え方に順応して片方の像を頭の中で消去する抑制が働くため、混乱視や腹視は生じないケースが多い傾向にあります。